地域と国家間の経済成長に関する実証研究

野田英雄 (旭川大学経済学部)

 経済成長理論とその実証分析についての関心が再燃してから現在までおよそ15年が経
過した。しかし,その期間に多数の理論的進展がもたらされたにもかかわらず,国家間お
よび地域間に関する近年の実証研究において,新しい成長理論からの興味深い示唆はそれ
ほど提示されていない。むしろ,従来型の新古典派成長モデルのフレームワークの方がデ
ータからの支持を受けている。
 本稿の目的は,近年における経済成長の実証に関する先行研究を整理し,それを踏まえ
て経済成長の新しい実証的フレームワークを提示することで る。まず,第1節では,近
年の経済成長における理論と実証を概観し,経済成長をもたらす諸要因を検討する種々の
実証的手法について見解を述べる。第2節では,Barro(1991)のようなクロス・セクション
のフレームワークをパネル型のモデルに拡張する。パネル型への拡張の理由は標本情報を
拡充することで る。