相対位置評価法による親水港湾空間の評価に関する研究

   鈴木 聡士(札幌大学)
   盛 亜也子(北海道大学)
   加賀屋 誠一(北海道大学)

  近年、港湾は本来の機能である「物流的機能」のみにとどまらず、「親水的機能(イベント・休憩・展望等)」もあわせて整備すべきという考え方が強くなってきた。このような背景から、北海道後志管内の主要港である小樽港・石狩湾新港・岩内港においては、特に札幌都市圏から近距離に位置していることから、さまざまな親水機能の整備が望まれている現状にある。
このような親水的機能を整備する際には、特に利用者のニーズ・意見・意識等をしっかりと把握し、その上で計画を立案する必要がある。
 そこで本研究では、札幌市民が港湾に求める機能を把握するため、現状の小樽港・石狩湾新港・岩内港に対する意識調査を実施した。また、この調査の際には、意識調査分析手法の一つであるAHP(階層分析法)に着目し、この手法を活用したアンケートを実施した(層化二段階無作為抽出法により、札幌市内の1100世帯を抽出、回収数は244であった。)。ここで、AHPは評価要因および代替案が多数になると、被験者のアンケート回答時における評価負担が増大する等の問題があるため、それを緩和することが可能な「相対位置評価法」を用いた。
 これらを分析した結果、次のことが明らかとなった。
 (1)休憩展望機能および商業機能のニーズが高い。
 (2)20、30歳代および60歳代以上の属性では休憩展望および商業的機能のニーズが高くなる傾向にある。また、40-50歳代では、釣りやマリンスポーツ機能のニーズが、他の年齢属性にくらべ高くなる傾向がある。
 (3)港湾の総合評価においては、小樽港が最も高い評価を得たが、休憩展望・商業機能の評価が高いことが理由であることが分かった。