越境汚染と自主的取り組みのもとでの排出税政策

大内田康徳
北九州工業高等専門学校


 環境政策の実施に際して政策変数を企業が排出削減投資を
行う前にコミットすることの役割は決して小さくない。しかし,
コミットした内容に信憑性がなかったり,政策の時間不整合性
の問題が非常に重要な問題であることが最近の環境研究で
指摘されている。そうした点を踏まえて,政府が環境政策の
変数を決定する前に企業自らが自主的取り組みを行うことも
分析の対象とされ始めている。
 越境汚染は世界的に問題となっている地球温暖化の本質で
あるにもかかわらず自主的取り組みの枠組みでの分析はなされて
来なかった。同時に,越境汚染の削減において国家間での協力を
強調する研究もあるが,自主的取り組みの枠組みでの政策協調の
検証はなされていない。そこで本稿では,Brander=Spencer流の
戦略的貿易モデルを用いて利害の対立を描写しながらどのような
ときに排出税の協調課税が望ましく,あるいはどのようなときには
協調課税が望ましくないのかを解明する。