自治体の財源調達における経済効果

田中 智泰 (神戸大学)

 近年、わが国では地方分権を推進するために補助金の改革と税源委譲政策が検討されている。自治体財源は地方交付税や国庫支出金をはじめとする依存財源が大きな割合を占めている。地方分権を行い自治体が自ら政策を決定し公共財の供給を行うためには、自ら財源を調達する必要があり、補助金改革と税源委譲は重要なテーマの1つである。

 このような経緯を踏まえて、本研究では国庫支出金を全額廃止し地方交付税に転換する場合と廃止分を税源委譲し自治体が自ら課税する場合の経済効果を計測する。具体的には、両者によって公共財と私的財の需要がどのように変化するのか、また自治体の厚生水準はどのように変化するのかについて、わが国の都市を対象に計測を行う。

 その結果、次の点が明らかになった。第1に、理論的に地方交付税に転換したほうが税源委譲するより厚生水準を増加させる。第2に、実際の都市データを用いて効果を計測すると、地方交付税に転換することと税源委譲することによって公共財から私的財に需要がシフトする。第3に地方交付税への転換と税源委譲による厚生水準の変化を等価変分で計測すると、厚生水準の変化はほとんど起こらない。