坂本 博 (大阪大学)
本稿は中国における地域間格差研究に関連して、省内格差の分析を試みる。ここでは中国南部の広西壮族自治区における県レベルの時系列データを用いて地域格差の傾向を分析する。広西は隣接の広東省と比較して、初期時点の経済条件に格差が存在するにもかかわらず、改革開放後、経済成長率が広東省を上回ることがほとんどなかった。また工業化は進んでいるものの、産業の中心が農業にあるといった特徴を持つ。
分析はまず県間での所得分布構造を推計し、分布が広がっていく様子を観察する。そしてβ収束やσ収束の観点から計量分析を試み、概ね収束性が観察されないことを示す。これらの結果は全県で地域格差が拡大傾向にあることを意味している。
一方で各行政地域の中心都市間では格差が縮小傾向にあることから、地域格差の要因を農村部の経済発展の遅れととらえ、分析可能な変数について回帰分析や主成分分析を行うことによって地域格差の要因を検討した。