Cooperative Common Pool Resource Game
渡辺淳一(福岡大学)
この論文ではコモンプール経済における協力の可能性について分析をおこなう.共有
地の悲劇として知られているように,非協力ゲームの枠組みにおいては,このような
経済ではパーレートの意味で効率的な均衡が達成されないことはよく知られた事実で
ある.負の外部効果が発生するために,労働投入量が増加するにつれ限界生産力が逓
減してしまうのが原因である.このような場合,すべてのプレーヤーが労働投入量を
うまく調整することができれば効率的な生産を達成することができる.この論文では
プレーヤーたちの自発的交渉によって,この非効率性を解消することが可能であるか
を分析する.
この分野の先行論文としてはFunaki and Yamato (1999)やPham Do, Folmer and
Norde (2001)などがある.彼らの論文においてもプレーヤーたちが全体提携に合意す
るかどうか,またそのための条件は何かなど,すなわち,プレーヤーたちの自発的交
渉によって,この非効率性を解消することが可能であるかについて分析を行ってい
る.しかし,彼らのモデルでは,プレーヤー間の協力による成果を表現する特性関数
の作り方に欠点があるように思われる.ここでは,協力ゲームの構成の仕方に工夫を
加え上記の問題を検証する.