北村 幸定(京都大学)
青山 吉隆(京都大学)
中川 大(京都大学)
松中 亮治(京都大学)
現在、連続立体交差事業や地下鉄建設等の大規模交通施設整備の事業実施計画において、地元自治体には相乗効果を理由に市街地再開発事業や土地区画整理事業などの都市開発事業の同時実施、いわゆるセット採択が国庫補助金交付の必要条件として政府から義務付けられている。このような都心部での重点的な公共投資政策の結果、短期間に多様な都市基盤が整備され、相当の効果が発揮されてきた。
しかしながら、地方自治体に多大な財政負担を強いることになるセット採択制度は、地方債残高の急増から子孫の世代に大きな負債を残す危険性を含んでおり、将来的には地方財政硬直化の大きな誘引となることは否めない。したがって今後は、相互に影響しあう公共事業について、その相乗効果や相殺の構造と程度を示すことにより、現行の一律的なセット採択制度から複数のプロジェクトを必要に応じて適切に取捨選択できる制度への変換が必要になるものと考えられる。
そこで本研究では、今まであまり考慮されることがなかった公共事業間の相乗効果を測定するため、同一地区において計画されている交通インフラ整備事業と都市再開発事業に着目する。具体的にはwithout状態の差異が相乗効果を現す大きな要素のひとつであると考え、何も整備されていない状態と双対する事業が実施された状態での便益をそれぞれ計測し、その結果から相乗効果や相殺を定量的に求めることとする。また、相互に影響し合うと考えられる双方の事業特性について比較考察を行い、同一地区における複数の事業の計画策定時において考慮すべき点を整理する。