国際寡占競争下における共同研究開発と直接投資について
  
前鶴政和
大阪経済法科大学経済学部
 

  本稿では、二国の寡占産業において両国企業が輸出または直接投資(FDI)を行っているような状況で、両企業が共同研究開発を行う場合と非協力的な研究開発を行う場合とで研究開発の水準および経済厚生がどのように変化するかを明らかにする。
  現実の経済を眺めてみると、寡占企業同士の国際競争は輸出競争だけにとどまらず、海外に子会社を設立する直接投資が行われ、多国籍企業同士の競争が盛んに行われている。このような状況で、各企業が行う研究開発の形態も、個別に研究開発を行うだけでなく、多国籍企業同士での共同研究開発活動も活発である。
  具体的な想定として、第1国と第2国という2国に、同質的な財を生産する企業の本社が1社ずつ存在するものとする。両企業は輸出またはFDIによって外国市場に供給し、さらに、費用削減のための共同研究開発または非協力的な研究開発を行い、販売量に関するクールノー競争が行われている状況を想定する。4段階のゲームで、第1段階では各企業が輸出を行うかFDIを行うかを選択し、第2段階において共同研究開発を行うか非協力的な研究開発を行うかを選択し、第3段階において研究開発の結果として生じる費用削減水準を選択し、第4段階において各市場における販売量を選択するものとする。このゲームは後ろ向きに解かれ、最終的に得られる均衡はサブゲーム完全均衡となる。
  このとき、研究開発に伴って一方の企業による研究開発の成果の一部が他方の企業に漏出する技術スピルオーバーの存在を仮定し、スピルオーバーの程度次第で輸出またはFDI、共同研究開発または非協力的な研究開発の間でどちらがより望ましいかを明らかにする。