大規模地域開発におけるコンフリクトの展開に関する研究
一般に、大規模開発においては、計画並びに建設期間が長期化する。そして、この間に、
防災に対する危機意識が低下したり、地域環境に対する認識が変化したりするといった、
価値観の変化が起こる。この為に、計画初期段階では、最も合理的であると思われた案が、
完成時には住民の要望とはかけ離れたものとなってしまうといったことが、しばしば見受
けられる。つまり、大規模開発計画は自己矛盾を内包しているということである。そして、
最近よく話題となっている、開発を推進する主体(開発派)と環境保護を強く主張する主
体(環境派)間のコンフリクトの発生が原因となって、計画の自己矛盾が表出する。
上記の認識のもとで、本研究では、価値観の変化や防災意識の低下を態度変化関数とい
う形でモデル化する。態度変化関数は、主体同士の相互に及ぼしあう影響を記述する相互
影響モデルと、人の忘却の時間的変化を記述する忘却モデルからなる。本モデルと安定性
分析を行うための一手法であるコンフリクト解析と組み合わせて用いることによって、時
間軸を考慮した循環的なアルゴリズムによる分析が可能となる。本モデルのもとに、大規
模開発計画の進展を時間軸に沿って追いかけ、どのような要因がプレイヤーの態度変化に
影響を及ぼしたのか、またどのような過程で現実の態度変化が起こったのかを明らかにす
る。
本モデルを、社会の関心を呼んだ長良川河口堰問題に適用し、歴史分析を行うと同持に、
モデルの適応性を見る。さらに、今後の計画において有用な情報を得るために、今日的な
シナリオ、例えば地方分権が推進された場合を想定して、過去に関する実験という形で安
定性分析を行う。
A study of the changing process of the conflict on a large-scale
regional development project
Generally, as for the large-scale development, a planning and
construction period turns in a long
time. And the change of the sense of values
happens for this period. Because of this, the plan which
is thought to be the most rational at the
early stages of a plan often becomes far from the
inhabitant's
request at the time of the completion. In
other words, large-scale development project involves
self-contradiction. The occurrence of the
conflict between the environment side player and the
development side player causes
self-contradiction to come out.
In this paper, a change of the sense of values and the decline of the
disaster consciousness are
modeled by the attitude change function.
This function consists of the mutual influence models
which describes the mutual influence
between the players and the oblivion models which describes a
change in a time target of the person's
oblivion. An analysis by the circulation to took a time shaft
into consideration becomes possible by
combining the model with the conflict analysis which is
focused on a stability analysis.
This model is applied to the problem of Nagara River mouth weir to check
the adaptability of the
model ,and to do a history analysis.