大気汚染物質排出削減政策の日本経済への動学的影響分析
本研究では大気汚染物質の排出に削減に関心が向けられる。近年の大気汚
染問題は従来の特定の汚染源から排出される物質ではなく、社会経済活動全般か
ら排出される物質によるものであることが特徴的である。こうした問題は排出の
直接規制政策による解決は困難であり、市場メカニズムを通じた間接規制政策が
近年注目されている。そこで、本研究は汚染物質の排出削減を目的とした排出
税・補助金政策を日本経済に導入した場合、いかなる影響があり、どれほどの削
減が可能であるのかを動学的に分析する。
構築したモデルは非線型の双対問題を基本とし、汚染排出税を導入しながら、複
数の大気汚染物質の排出量制約の下で国民厚生を最大化させる当該経済の経済活
動の最適レベルと大気汚染物質の最適排出量を決定する、動学産業連関経済分析
モデルである。汚染排出税は汚染除去の機会費用を通して各汚染物質の社会的費
用が反映され、モデル内で内生的に導出される。
モデルには通常財の生産活動を行う32の通常財産業部門、大気汚染物質を除去す
る3つの汚染除去産業部門、さらに最終需要部門として家計と政府が存在する。
大気汚染物質は通常財産業の生産活動及び最終需要部門における消費活動、さら
に汚染除去産業の汚染除去活動に伴い排出されると想定し、部門別生産額と汚染
物質の排出量との間には線形関係があると仮定した。想定する汚染排出税は生産
者負担主義とし、政府は大気汚染物質の排出量に従い各産業に汚染排出税を課
す。汚染排出税収は汚染物質排出削減対策費として汚染除去産業部門の運営費及
び各産業の生産活動維持のための補助金に充てられる。また財価格は各産業に課
される汚染排出税を反映して決定される。
環境税などの経済的手法は、市場メカニズムを通じた最も少ないコストでの最適
な配分をもたらすなどの利点を有する。本研究の基本的な考え方は、複数の汚染
物質の制御を経済構造の中に統合される形で総合的に分析するというものであ
る。
A Dynamic Analysis of the Economical Policy to Reduce the Air
We present an dynamic input-output model,
which determines the optimal
level of economic activities and their
optimal emission of air
pollutants so as to maximize the welfare
function being subject to the
emission standards of the air pollutants
with respect to the emission
taxes. By making the emission standards
strict step by step, we analyze
the feasibility and implementability of the
reduction scenario in the
Kyoto Protocol by the numerical
simulations.
In this
paper , it is argued that the cost of reduction in the emission
of air pollutants in terms of GNP is large
and the welfare rapidly
decreases less than generally
tolerable level as the reduction
rate
increases, at least in the short run.
We
formulate a model of the total environmental economic system, which
controls the air pollutants emitted by not
only industries but also
households. The fundamental of the model is
the non-linear dual system
of the input-output analysis.
The model
is applied to the Japanese economy in 1997. Thirty-two
industries are distinguished, and three
types of pollutants, CO2, SOx
and NOx are analyzed.