ベトナムにおける産業生産額にみる地域格差の動向分析

 

 

 1980年代から対外開放政策をとって以降、ベトナムは急速な経済成長を遂げている。しかしその一方で、国内的には、産業立地の相違等により地域間の経済格差の拡大が問題になりつつある。本稿では、農業、鉱工業の生産額と地域の人口の動向からみた地域間の経済格差の動向を分析し、地域間格差をもたらす要因について計量経済学的な分析を試みた。得られた知見は、以下の通りである。

 第1に、ベトナムを53地域に区分し、1991年から98年の各地域における生産額と人口をもとにジニ係数の年次変動を算定した結果、7年間に地域間格差が拡大していることが明らかとなった。

 第2に、同期間中に生じたジニ係数の上昇を要因毎に分解すると、地域間格差をもたらした要因の過半が、鉱工業生産額の増加における地域的な偏在によることが明らかとなった。

 クズネッツの逆U字仮説を実証した先行分析結果は、他の途上国においても経済成長に伴って経済格差が拡大する傾向を示唆する。ベトナムの上記結果は、逆U字仮説と整合的な結果と言えるが、問題は、地域格差が年を追って拡大する傾向がみられる点で、今後、鉱工業立地の点で不利な農村部の開発が重要課題と考えられる。

 

Analysis about the regional gap of production in Vietnam

 

 

After 1980's, Vietnam is accomplishing rapid economic growth. On the other hand, expansion of economic gap between regions is becoming a problem in a domestic policy. In this report, I analyzed an economic gap and the factor. The findings are as follows.

   Firstly, I estimated the Gini's coefficient based on the amount of production and population in 53 regions from 1991 to 1998. As a result it becames clear that the gap between regions spread in the analysis period.

   Secondly,it is clear that the major factor of regional gap is the regional uneven growth of manufacture, as a result of having measured the degree in the change of the Gini's coefficient.